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令和5年度 事業計画

 令和元年度から続くコロナ禍の影響により様々な制約がある中で、県事研の活動を行ってきました。令和5年5月8日より、新型コロナウイルス感染症の感染法上の位置付けを季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げることが決まりました。とはいえ、完全に収束するまでには至っていません。今年度も新型コロナウイルス感染症に対するこれまでの知見を生かし、感染対策をとりながらポストコロナ時代に向けて、活動を進めていきます。

 現在文部科学省では、2023年度から始まる第4期教育振興基本計画の策定が進んでいます。教育振興基本計画は、予測困難な時代における国の教育の方向性を決めるものです。審議の中で、今後の教育施策に対する基本方針として下記の五つの項目が上げられています。

  1.  グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成
  2.  誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進
  3.  地域や家庭で共に学び支えあう社会の実現に向けた教育の推進
  4.  教育デジタルトランスフォーメーションの推進
  5.  計画の実効性確保のための基盤整備・対話

 私たちも学校事務の立場から「主体的・対話的で深い学び」「ICT環境の充実」等を実現できるような教育環境を整備すること、教育費負担軽減に向けた経済支援に取り組むこと、コミュニティ・スクールにより地域や家庭、保護者と学校との連携をはかることなどについて、学校現場において引き続き取り組んでいく必要があります。

 県事研では、学校事務職員のミッション(学校事務職員の使命、目指す目標)を、「教職員や地域の人々とともに子どもたちの笑顔あふれる学校づくりを進める」ことと定め、そのための重点目標として「チームとしての学校づくり」「地域とともにある学校づくり」「学校づくりを推進する共同実施組織」の三つを掲げて研究活動を進めています。

 県事研のこれまでの研究は、「学校事務」の理想像をかかげ、そこで働く学校事務職員の「職務」と「職責」と、そのために必要な「能力と研修」を提示し、先進的なモデルを紹介するという形で活動を進めてきました。それが、全事研や東海事務研の研究活動とも重なり、文部科学省が令和2年7月に示した「事務職員の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則の参考例」にもつながっていると思っています。反面、そのことが、会員にとっては、現実との乖離や「そんなにたくさんの仕事をしなくてはいけないのか?」という負担感を感じさせるものとなっていました。

 共同学校事務室が制度化されたことや文部科学省から標準職務が示されたことにより、県事研の活動も大きな転換期を迎えています。今後は、共同学校事務室や学校において、組織をどう作り、どう動いていくかということを考えていきます。単数配置を前提とした事務職員個人の職務や能力開発という視点にとどまらず、人と人との関係、特に共同学校事務室の中での人間関係や活動に注目する「組織開発」に着目した活動を進めていきます。具体的には、人と人との関係、特に共同学校事務室のようなグループの中で、コミュニケーションだけでない心理的安全性を含んだ人間関係や組織の文化風習に注目し、組織に効果性・健全性・再生力を持たせるような活動をする必要があります。

 小中学校の学校事務は、行政組織の中では末端にあたりますが、その分、現場で学校を動かすことができる仕事です。また、単数配置が標準であるがゆえに、ICTを活用したネットワーク型の柔軟な組織など新しい形の組織も作りやすいという利点があると思います。組織で学校事務の課題を見つけ、自分たちに何ができるかを考え、組織で、課題解決や新しい価値を見つけだすようなチャレンジをしていく。そういう資質を高める仕組みを作ることで、新しい学校事務を展開するという方向で県事研活動を進めていきたいと思っています。県単位の研究団体として、各地区と連携し、地区の課題を県内で共有し解決策を考えていくことを基本に、変化の激しい時代の中で、会員の不安な気持ちに寄り添い支援していくための活動を進めていきます。

 今年度の活動の5つの柱。

1.研究活動

 令和4年度の東海大会では、研究開発部が「学校事務サイコウ論」を提案しました。その中で特に、現状の課題として、(1)業務拡大への不安感(2)業務の属人性と個業性(3)共同学校事務室のあり方と機能の三つがあげられています。新たな学校事務を展開していくためには、属人性を伴う個業としての学校事務から、法令に基づく組織となった「共同学校事務室」での組織としての学校事務にする必要があります。令和4年度の分科会発表を踏まえて、組織開発の研究を進めていきます。

2.研修の体系化と学校事務職員のキャリア形成についての具体化

 令和2年度から4年度にかけて、県教委総務課と県総合教育センターの研修担当者とともに、「市町村立学校事務職員研修検討会議」において、学校事務職員の研修・能力形成について検討してきました。今後は、学校事務職員の育成指標についても検討していきます。特に学校事務職員のキャリア形成を意識した研修の体系化を考えていきます。

3.県大会の運営

 今年度、県大会は、名古屋市公会堂で開催する予定です。引き続き県事研の研修企画部を中心に運営を進めていきます。大会については、できるだけ簡素化をはかりつつ、研修効果が高まる研究大会の運営を目指していきます。

4.ICT環境の整備と学校事務職員

 3年以上続くコロナ渦の中で、デジタル化を進める価値が高まり、その影響は学校にも及んでいます。今後は、教員の働き方改革も見据えて、校務運営に関するICT化も進んでいくことが考えられます。ICT化が学校事務に与える影響も考えつつ、引き続き、国の動きや県内の市町村の動きなどの情報提供をしていきます。

5.地域連携に関する取り組みに対する情報提供

 愛知県でもコミュニティ・スクール化されている学校が増えています。その中で学校事務職員の地域連携に関する取り組みなどについての情報提供をし、コミュニティ・スクールにおける学校事務職員の役割について考えていきます。