愛知県事務研ナレッジサイト愛知県公立小中学校事務職員研究会

愛知事務研ナレッジサイト

あい・学校スマイルプラン印刷用PDF  ◆スマイルプランリーフレット


あい・学校スマイルプラン
-愛知における学校事務のグランドデザイン-

愛知県公立小中学校事務職員研究会

目次

1 はじめに

  1. (1) 愛知における学校事務のグランドデザイン策定の背景
  2. (2) 愛知における学校事務のグランドデザイン策定の経緯
  3. (3) スマイルプランの目標
  4. (4) スマイルプランの構成

2 新たな学校事務職員像と役割

  1. (1) 学校事務の使命
  2. (2) 学校事務職員に求められる役割と職務(目指す学校事務職員像)
  3. (3) 5つの基幹的マネジメント

3 学校事務職員が役割実現をしていくための実行策

  1. (1) アクションプラン(行程表)
    1. 全体構成
    2. 到達目標と評価
    3. 研究会組織運営体制の整備
  2. (2) 3つの実行策(基本計画)と発展計画
  3. (3) 実行策の具体的な取り組み
    1. 学校事務の組織化(共同実施)の推進
    2. 学校事務職員の人材育成

4 今後の課題

  1. (1) 世代交代への対応
  2. (2) 意識改革と情報発信
  3. (3) 関係機関・団体、他職との連携・協働
  4. (4) それぞれの実施主体の取り組み課題

5 後期スマイルプラン展開に向けて

  1. 資料編1 行程表
  2. 資料編2 用語の説明
  3. 資料編3 平成24年度学校事務情報交換会プレゼン資料
  4. 資料編4 「学校事務の将来を描く」
  5. 資料編5 自主研修体系8次案(学校事務職員の職務行動例より)

1 はじめに

(1) 愛知における学校事務のグランドデザイン策定の背景

社会や学校教育が変革期にあるといわれて久しくなりますが、変革の波がおさまる気配はありません。今後、義務教育がどのように進んでいくのか、またその中で学校事務がどう変化していくのかを見通すことは非常に難しい状況にあります。しかし、変化の先に新たな学校事務の可能性が開かれていることも事実です。

学校教育のあり方が見直される中で、学校事務に関する問題も国や地方の行財政改革の動向や「学校教育環境整備」の課題など、これからの学校づくりとのかかわりから様々な形で議論が始まっています。中でも「教員の子どもと向き合う時間の確保」として、学校の事務負担の軽減がクローズアップされています。また、分権化や地域主権の流れの中で、開かれた学校づくりの推進、自主・自律する学校づくりの動きが強まり、学校の組織運営体制の整備と併せて、「学校運営協議会」等に一定の責任と権限を持たせ、保護者や地域住民とともに学校経営を行うという新たな学校づくりを進展させていく動きも現れてきています。

愛知県でも、行財政を取り巻く環境の急激な変化や危機的な財政状況に対応するため、平成17年2月に「あいち行革大綱2005」(計画期間:平成17から22年度)を策定し、本年1月25日には、新たな行革大綱「愛知県第五次行革大綱」(計画期間平成22年から26年度)が提言され、行政だけでなく地域にかかわる様々な主体の参画による「新たな公」の確立に向けて、分権・協働型社会への対応を目指した行政改革が行われています。

また、家庭・地域・学校との協働とそれを支援する県の施策を示した本県初の「あいちの教育に関するアクションプラン」も本年度が最終年度となり、愛知の教育の推進に向けて、家庭・地域・学校が一体となった様々な事業も行われています。

今後は、地域と学校の新たな関係づくりに向けて、学校にかかわる様々な人々の思いをつなぐ役割がより重要になってきます。

このことは、ICT化の進展を含めて地域主権改革が進んでいく中で、市町村行政や教育委員会の事務も含めて、学校にかかわる全体の事務を見直し、新たな学校事務を再構築することが求められているといえます。市町村の公立学校に勤務する唯一の行政職員として、学校事務職員である私たちは、この状況の中でどのような役割を果たすことができるのでしょうか?今こそ、よりよい学校教育のために、また地域づくりのために、学校事務職員が果たすべき役割を内外に示し、実践していくことが急がれているのではないかと考えます。

(2) 愛知における学校事務のグランドデザイン策定の経緯

愛知県公立学校事務職員研究会(以下県事研)は昭和32年に設立以来、その目的である「会員相互の連携をもとに学校事務の研究を推進し、会員の資質及び社会的地位の向上をはかり、学校教育の発展に寄与する」ことを目指して研究活動を行ってきました。昭和54年には「第1次愛知県公立小中学校事務研究基本計画」、昭和60年には「第2次愛知県公立小中学校事務研究基本計画」が策定されましたが、その後県事研としての長期計画が立てられることはありませんでした。また、平成14年には「特別委員会の答申」として、県事研が取り組むべき今後の方向性を提言し、その後全国大会を始め各種大会で「新たな学校事務の創造」に向けてのビジョンを提案してきましたが、全体的な行動計画を伴っていなかったこともあり、それを実現するための実践に必ずしも結びついていなかった側面があります。

このような状況の中、学校に求められる役割や学校事務や学校事務職員に寄せられるニーズも時代とともに変化をし、多様な価値観に応えうる新たな学校事務の実現が急がれています。そのためにも、これまでの県事研が取り組んできました研究や研修の成果と課題を整理し、これからの学校づくりの実現に向けた総合的な行動計画の策定とそれを具現化していく具体的な実践の開始が急がれていると考えます。

また、県事研の役割もともすれば会員内で完結してきた研究の果実を、社会に広く還元し、これからの学校づくりにより貢献していくことも求められてきています。

愛知における学校事務のグランドデザインは、今まで県事研が研究してきた学校事務職員のビジョンを実現し上記の課題に応えるために、「あい・学校スマイルプラン」(以下スマイルプラン)として策定しました。

(3) スマイルプランの目標

今回のスマイルプランでは、学校事務の使命(あるべき姿)を明らかにするとともに、それを実現するために実行策と行動計画としての行程表を描いたことが特徴です。ここで描いたものは、県事研の活動計画ですが、これからの学校づくりに向けて、市町村や会員がそれぞれ考え実行していくための指針でもあります。

今後、事務処理の合理化・効率化はさらに進んでいくことが想定されます。その中で、学校事務職員の存在意義が、どこに求められるのかを見通していかなければなりません。処理の合理化・効率化を積極的に提案して改善を進め、新たに経験や能力をもとにして、より高度な仕事に取り組むことが私たち学校事務職員に求められていると考えます。県内のすべての学校事務職員が、「子どもたちや地域の人々の笑顔あふれる学校づくり」という共通の到達点に向かって日々実践し、愛知の学校教育をよりよいものへ導くことがこのスマイルプランの目標です。

(4) スマイルプランの構成

今回のスマイルプランでは、まず「目指す学校事務職員像と役割」を掲げ、次にそれを実現していくための「県事研の実行策」を提示しました。さらにそれを受けて、県事研と支部・市町村そして会員のための行程表を策定しました。今回の行程表は、平成22年度から26年度までの5年間を当面の行動期間と想定しています。内容としては、当面の目標として、学校事務の基盤強化に重点をおいた展開を進めていきます。併せて、その進展状況を見ながら、学校事務の高度化を目指した展開も進め、次期スマイルプランにつなげていく形をとっています。まず、目指す学校事務職員像を担っていくためには、スマイルプランの実行主体である会員一人一人の日々の実践をもとに、これからの学校づくりに向けての課題を主体的に解決していく姿勢が不可欠になります。同時に、会員個人で対応できる課題も限られていますので、そこで解決できない課題を組織全体で対応していく必要があります。

そのため、スマイルプランでは、会員個人ができないことは市町村で、市町村で対応できないことは支部で、支部でできないことは県事研で対応するという「補完性の原理」をもとにした県全体の行動計画を考えています。また、地域間の差も大きいことから、地域の事情・学校の事情を考慮して、目指す学校事務職員像を担うために、それぞれができるところから考えて実行していく形をとっています。そのためにも、県事研・支部・市町村の役割分担の明確化と連携・協働機能を強化し、ビジョンと情報の共有をもとに相互補完的な体制づくりを構築していく必要があると考えています。

以上を踏まえて、支部・市町村・会員の年度別の行程表は、地域に根付いた学校事務を実現していくためにも市町村単位での取り組みが中心になってくるものとして、策定しました。


2 新たな学校事務職員像と役割

(1) 学校事務の使命

スマイルプランでは、「学校事務の使命」を「地域との協働によって、子どもたちの豊かな学びの実現と健やかな成長を促すように、学校教育環境の整備を進め、子どもたちや地域の人々の笑顔あふれる学校づくりを進めること」と定義しました。そのために、学校事務職員が具体的にやるべきこととして、「学校教育環境を整備すること」と「地域に開かれた学校の実現」という大きく2つの目標を設定しました。

「学校教育環境を整備すること」とは、私たちが学校の中で、教職員の人事管理に関する事務や安全で充実した学習環境の整備など行財政面から教育諸条件の整備を進めていくことを意味します。その中には、「教員が子どもと向き合う時間の確保」も含まれます。そのために、まずICTなどによって、学校全体の事務の合理化を提案し推進するとともに、教員が担当していた事務の一部を学校事務職員が担っていくことも必要です。しかし、公立の小学校・中学校の場合、原則として学校事務職員は、各学校に1名しか配置されていません。個人の経験や意識差の問題を乗り越えて、いずれの学校においても質の高い安定した学校事務が保障されるように、今回のスマイルプランでは、地域の学校事務職員が共同実施組織を構成し、その組織力によって、連携する各学校の事務機能を高め、地域全体の学校教育環境の整備をすることを考えます。

もうひとつの方向性は「地域に開かれた学校の実現」です。今、学校では、自主・自律する学校づくりに向け、地域の特色を生かした学校づくりが様々な形で展開されています。一方で、学校の組織運営体制の整備の課題も投げかけられています。また、「学校評議員」「学校運営協議会」「学校支援地域本部」などの進展に併せて、地域とともに行う新たな学校づくりに向けての動きが活発になっています。中央教育審議会の答申でも「地域が一体となった子育ての支援や異年齢集団活動など様々な体験活動を充実し、地域社会をあげて子どもたちを心豊かに育てていく環境を整備していくことは、地方教育行政上の極めて重要な課題」とされ「地域コミュニティの拠点としての学校・公民館の活用」が提唱されています。「開かれた学校の実現」とは、「学校教育」を通じて人づくり、街づくりを行うというこれからの学校への新しい要請に応えていくことです。地方分権の流れの中で、教育に関する権限は、国から地方へ、さらに教育委員会から学校へという方向に流れようとしています。私たち学校事務職員は、学校に所属する行政職員として、地域住民の学校運営への参画を支援し、住民の意思を尊重する学校をつくりだし、それらの仕事を通じて地域を活性化させて、学校にかかわる人々の満足度を向上させていく取り組みをしなければなりません。これを『学校事務の高度化』と呼ぶこととし、将来的に「新たな事務分野」として開かれた学校づくりを担う学校事務職員の仕事として実現したいと思います。

「学校教育環境を整備する」ことと「地域との協働」はともに「子どもたちの豊かな学びの実現」として、密接にかかわり合っています。どのような時代になってもこれまで私たちが培ってきたものをいかしながら、「子どもたちや地域の人々の笑顔あふれる学校づくり」を実現するために仕事をしていくこと、それが市町村の公立学校の現場に勤務する行政職員としての私たち「学校事務職員」の使命であると考えます。

(2) 学校事務職員に求められる役割と職務(目指す学校事務職員像)

今後、「学校教育環境を整備」し、さらに学校事務を「高度化」し、地域とともに「笑顔あふれる学校づくり」に携わるために学校事務職員が果たすべき役割として具体的に、「組織」・「情報」・「財務」・「カリキュラム」・「地域連携」にかかわる「5つの基幹的マネジメント」を行うことが必要であると考えます。(なお、マネジメントの中には、それぞれの事務処理も含まれると考えています。)

そして、共同実施組織なども活用して、地域全体でこれからの学校づくりの様々な場面で、5つのマネジメントの実践をもとに、これからの学校づくりに必要になる、次の3つの役割「3torの役割」を学校事務職員が果たしていくことが重要であると考えます。

具体的には、学校内や共同実施組織で行財政管理を行う仕事としての「アドミニストレーター」(行財政管理者)としての役割、教育委員会など行政と学校現場の意思を調整する仕事としての「コーディネーター」(調整者)の役割、地域の人々や保護者等とともに地域と学校の連携を促進する仕事としての「ファシリテーター」(協働促進者)の役割を果たすことになります。このように、学校事務職員が学校事務の統括者として学校経営に参画して地域に開かれた学校づくりの中心的な役割を担うことで、「子どもたちの笑顔を育む」環境づくりに取り組んでいく必要があります。教育改革が進む中、教員の負担軽減や子どもたちの豊かな学びを支える「学校教育環境の整備」といった中短期の課題とともにすべての学校事務職員が「3torの役割」を果たすという学校事務の高度化に向けた課題についても同時に対応を考えていく必要があります。

(3)5つの基幹的マネジメント

◎ 組織マネジメント

学校内外の資源を活用して教育環境を整備し、学校教育目標を実現する

↓

☆☆☆学校力を高めることのできる学校事務職員☆☆☆

☆ 目指す学校事務職員像

  • 学校や地域の教育目標達成に向けて、学校にかかわる人々と協働して施策を企画立案し、運営・評価・行動のできる学校事務職員
  • 法令遵守の立場から学校づくりを実現することのできる学校事務職員
  • 他の教職員と協力し合い、学校の組織力を高めていく学校事務職員
  • よりよい教育活動の実践に向け、自己の責任を自覚し、発揮していく学校事務職員

☆ 具体的な職務の例

  • 学校の事務部門においてリーダーシップを発揮し、校内の学校事務について共同実施組織を含めて分配・調整・統合する
  • 校長の経営ビジョンや地域の要望を踏まえ、学校の財務管理、人事服務管理などを行う
  • 教育と行政の視点を併せ持った学校事務職員の独自性をいかし、法的知識や法令遵守の観点をもとに学校経営・危機管理にかかわっていく
  • 教職員とともに、学校内外のパートナーシップや資源を有効に活用し安心・安全な学校づくりへの取り組みをする
  • 学校評価の評価項目や評価の収集・分析にかかわり、的確な学校教育目標や学校ビジョン達成に関与する

広義の意味で、組織マネジメントはすべてのマネジメントを含むものであるが、以下の4つのマネジメントに入りきらなかったものを含めてあえて区別しました。

◎ 情報マネジメント

学校経営に必要な学校内外の情報を収集・分析して経営に役立てる。さらに地域に向けて、必要な時に必要な形で学校情報を発信・提供する

↓

☆☆☆的確に情報を提供できる学校事務職員☆☆☆

☆ 目指す学校事務職員像

  • 学校内外の情報を学校経営に必要な情報に統合し、わかりやすく提供できる学校事務職員
  • 校内の情報の管理を適正に行うことができる学校事務職員
  • 情報公開をはじめ各種問い合わせや資料提供について、説明責任を含めて的確に対応できる学校事務職員
  • 学校にかかわる情報を整理し、学校経営のために的確な提言ができる学校事務職員

☆ 具体的な職務の例

  • 学校内外の情報を収集、整理、加工して、仕事にいかせる仕組みをつくる。また学校経営を協議する会議の資料を作成し、経営判断をする校長を補佐する
  • 学校や地域の情報を、HPなどを活用し、地域や保護者に向けて、積極的に提供する
  • 個人情報保護の観点から情報管理を教職員とともに推進する
  • 情報公開や説明責任に関する校内での対応を取りまとめる

◎ 財務マネジメント

教育目標の実現のために学校の財務管理を担い学校教育環境の整備を行う

↓

☆☆☆財務を有効に統括できる学校事務職員☆☆☆

☆ 目指す学校事務職員像

  • 財務事務に関する知識をもとに、予算の効率的・効果的な管理を行い、教育目標の実現にかかわる学校事務職員
  • 教育課程と学校予算を結びつけた教育環境整備ができる学校事務職員
  • 共同実施組織により、地域の教育目標を共有し、学校にかかわる財務事務に関しての連絡・調整を行いながら組織内の学校の施設整備や備品整備を行うことができる学校事務職員

☆ 具体的な職務の例

  • 財務(予算)委員会を主催して、学校にかかわる財務や予算に関する協議を行う
  • 学校にかかわる財務の統括者として、学校全体の財務管理を総合的な視点から進める
  • 共同実施組織内の学校の備品や施設設備の状況を把握して各学校で共用・活用できるようにする
  • 安心・安全な学校づくりのために共同実施組織の属する学校や校区内の修繕や環境整備を主体的に行う
  • 学校行事や学校が関係する事業や行事の運営のための予算の編成と執行を行う

◎ カリキュラムマネジメント

教育目標達成に向けて、情報や財務マネジメントを通して教育課程の編成と展開にかかわり、学校の教育計画を実現する

↓

☆☆☆ともに教育をつくる学校事務職員☆☆☆

☆ 目指す学校事務職員像

  • 学校予算と教育課程とを結びつけ、自校及び共同実施組織内の各校の教育環境整備ができる学校事務職員
  • 教育課程に必要な教材や教具の整備について教員と協働して考えることのできる学校事務職員
  • 教員や保護者、地域の人々とともに、地域の基盤に立った教育を実現することのできる学校事務職員

☆ 具体的な職務の例

  • 教育目標やカリキュラムを実現するために、保護者負担や費用対効果を考えながら予算要求や予算執行をする
  • 校内のカリキュラム編成会議に参画し、予算面や例規など行政職員の立場から編成にかかわる
  • 地域と学校の連携の場で、カリキュラム経営をするための予算編成立案や報告書等の文書を作成し中心になって協議する
  • 教育活動の円滑な展開に向けて、効果的な学校施設や教材・教具等が活用できるように、学校教育環境整備をする

◎ 地域連携マネジメント

カリキュラムマネジメントを通して地域・学校・行政の思いをつなぎ、連携・協働を促進する

↓

☆☆☆思いをつなぐことのできる学校事務職員☆☆☆

☆ 目指す学校事務職員像

  • 学校、地域、行政の思いをつなぎ、地域に開かれた学校づくりを推進することのできる学校事務職員
  • 学校と地域が目指す子育てに対し、教育委員会や行政から適切な支援が得られるように連携調整を推進する学校事務職員
  • 学校と地域社会が協調して子どもたちの育成を考える協議の「場」で協働促進を進めることができる学校事務職員
  • 「学校運営協議会」や「学校支援地域本部」などの学校づくりの場に行政職員の立場から参加し、情報、財務、教育課程と地域のニーズを結びつけた学校経営を推進できる学校事務職員
  • 地域の行政課題に的確に対応し、街づくり・人づくりの観点から学校教育環境整備に取り組む学校事務職員

☆ 具体的な職務の例

  • 学校評価を始めとする学校づくりの場で、学校教育目標達成に向けて、地域のニーズを吸収し、地域への情報提供を進める
  • 地域と学校の連携の場で、学校財務の統括者として、学校や地域の教育目標達成に向けて中心となって協議を進める
  • 地域で学校運営を協議する場に参加し、協議を促進する
  • 地域づくりの観点から学校教育環境整備を主体的に行う

以上が、県事研が考える、目指す学校事務職員像と目指す学校事務職員の役割です。学校事務職員が学校事務の統括者として学校教育環境を整備し、地域に開かれた学校づくりを担うことで、「子どもたちや地域の人々の笑顔を育む」学校の実現に取り組んでいきたいと考えています。


3 学校事務職員が役割実現をしていくための実行策

(1) アクションプラン(行程表)

ア 全体構成

今後5年間の県事研と支部・市町村・会員で行う内容を具体的に提示しました。実行策シートとして、3つの実行策(基本計画)と1つの発展計画で示し、県事研で取り組んでいく内容を明示しました。また、支部、市町村(研究会・学校事務職員会・共同実施組織)で、何を行うのか例示しました。さらに、個々の会員がそれぞれの学校や地域(共同実施組織)で、目指す学校事務職員像を担っていくため、どのように取り組んでいけばよいのか、「組織」、「情報」、「財務」、「カリキュラム」、「地域連携」の各マネジメントの視点から提示しました。

イ 到達目標と評価

県事研の取り組み内容は、支部・市町村の実践の指針となることが求められます。そのため、県事研の進捗状況を確認し、次年度に向けての改善策を構築するために、行程表の中で特に中間目標と到達目標をあげ、次期スマイルプラン策定に向けての評価資料としました。

支部・市町村・会員それぞれの到達目標と評価については、それぞれの地域の実情に応じて、県事研の取り組み内容をもとに考えることとしました。

ウ 研究会組織運営体制の整備

☆ 研究会組織運営体制の見直し

今後学校事務を取り巻く課題が山積していく中で、研究会組織運営体制の見直しが必要になると考えます。既存の研究会事業をスマイルプラン実現の視点から抜本的に見直し、限られた研究会の経営資源の選択と集中をはかっていく必要があります。そのため、実行策を進めていく中で、事務局を中心とする専門部連携機能を強化できるよう、県事研組織運営体制の整備も併せて進めていきます。

☆ 県事研・支部・市町村の役割分担の明確化と連携・協働機能の強化

スマイルプランの実行主体は個々の会員であり、市町村であると考えます。また、市町村が研究・実践の中心となった時代に向けて県事研で対応できることも限られてきています。具体的な実行策は補完性の原理をもとに、会員・市町村・支部・県事研が一体となって、目指す愛知の学校事務職員像に向けて行動をしていくことが重要になります。そのため、実行策を効果的に進めていくために、県事研・支部・市町村の役割分担を明確にし、連携・協働機能を強化した相互補完的な体制づくりを構築していく必要があります。

(2) 3つの実行策(基本計画)と発展計画

学校事務職員に求められる役割を果たしていくためには、必要となる学校事務の基盤を整備することが重要になります。そこで基盤整備の具体的な実践に向けた、「3つの実行策(基本計画)」を策定しました。(「資料編1 行程表」参照)

さらに、学校事務の新たな課題に対応すべく、学校事務の高度化を目指していくための「発展計画」を位置づけました。ここでは、県事研の実行策を提示します。

◎ 実行策I

■ 学校事務の組織化(共同実施)・規定化の推進

☆学校事務の組織化を推進し、どこの学校でも、質の高い安定した学校事務の提供を目指していく。

県事研の実行策
  1. 学校事務のICT化を推進し、市町村・地域・学校全体の業務改善・事務改善の手立てを考える
  2. 学校事務の組織化(共同実施)を推進し、学校事務基盤を整備・強化する
    • ☆学校事務の組織化(共同実施)の標準的なモデル案を作成する(市町村教育行政連携モデル、地区事務室モデル等)
    • ☆「研修企画委員会」の設置に向けて関係機関と協議をするとともに、学校事務の組織化(共同実施)について検討する
  3. 文部科学省令に位置づけられた事務長制度の趣旨がいかせるように、関係機関と連携しながら制度の導入を目指す
    • ☆事務長及び省令事務長の役割を明確にし、責任と権限を伴った事務処理体制を整備する
  4. 職務内容の明確化、職位に応じた役割分担、権限と責任の明確化をはかるため具体的なモデルをつくる(校内及び学校間連携モデル等)
  5. 法的整備(兼務発令の制定、事務処理規程の整備、共同実施組織の行政組織としての位置づけ等)が進むように県教育委員会等関係機関に働きかける
  6. 組織化、規定化の実践事例を紹介する

◎ 実行策II

■ 研修体系の整備キャリア形成高度化に向けての研修体系の整備

☆目指す学校事務職員像の実現に向けて、研修を体系化し、学校事務職員が専門性をもって仕事ができるようにキャリア形成高度化に向けての体制を構築していく。

県事研の実行策
  1. 学校事務職員の職務範囲の拡大を可能にするために、制度研修、自主研修を体系化して研修制度の充実をはかり人材育成効果を高める
  2. 学校事務職員が組織マネジメント研修又は学校財務研修を受けられるよう研修体系を整備する
  3. 職能の各段階に応じた研修内容を確立する
  4. 学校事務職員に必要な研修内容を企画するため、教職員の研修を企画する県総合教育センターや市町村教育委員会などに学校事務職員経験のある指導主事の配置を求めていく
  5. 学校事務を共同で進めることの人材育成面でのメリットとして、OJT研修の強化をはかる
  6. ナレッジサイトの充実をはかる(学校事務にかかわる研究・研修・実践情報の共有及び知識交流、知識創造の推進)
  7. 学校事務の組織化から得られるメリットをいかして研修制度を体系化して、学校事務職員が高い専門性を身につけるキャリア形成の体制をつくる

◎ 実行策III

■ 学校運営体制の整備(学校評価・事務評価の実践・事務改善・見える化)

☆学校の事務機能を高めるため、5つのマネジメント推進体制の整備と学校事務の見える化をはかる。

県事研の実行策
  1. 各地区のマネジメントの実践実例を紹介し、学校事務の組織化(共同実施)等を活用した5つのマネジメントの展開の研究を進める(行財政的な立場から学校経営に参画し学校教育環境の整備を進める)
  2. 学校評価及び学校事務評価の方法や項目の検討を行い、評価制度により学校運営の改善をはかる仕組みをつくる
  3. 5つのマネジメントを実践するための実践事例や県事研の研究内容や研修内容を、たとえば「3tor通信」の事例のようにわかりやすい形で会員に提供し学校事務支援をする
  4. 学校経営支援、学校事務職員支援を行う(学校事務職員だけでなく関係職員にも役立つ)ための手引き・マニュアル・ハンドブック等の整備をする
  5. 情報発信機能を強化する(財務ウイークへの主体的な取り組み、外部への情報発信など、学校事務の「見える化」の推進)

※上記を各学校で確実に行うために、学校事務組織(共同実施)の連携校の学校経営を学校事務職員の連携によって進める方法について研究・実践する

◎ 発展計画

3つの実行策の実現を支援していくために、これからの学校事務の課題を整理し、下記のとおり発展計画を位置づけました。ここで検討をした内容については、整理ができた段階で随時3つの実行策の中に組み入れ、実践していきます。

■ 学校事務の高度化支援(学校事務支援・経営参画促進・外部協働)

☆学校事務基盤の整備と高度化に向けての職務を支援する体制の構築を進め、これからの学校づくりに向けて学校事務職員や学校関係者の経営参画を支援する。

☆新たな学校事務の課題解決に向けての支援策の検討をする。

県事研の実行策
  1. 学校事務職員として、学校評議員会・学校運営協議会・学校支援地域本部など地域住民を交えた学校づくりの場にかかわっていく方策を打ち出す
  2. 保護者、地域住民を交えた関係機関との連携・協働の機会構築に向けて、県や市町村に理解が深まるように働きかけをする
  3. 地域のコミュニティ機関としての学校づくりの場に参画していく方策を考える
  4. 国や県の政策や施策について会員や学校職員にしらせる
  5. 研究会活動の「見える化」を進める
  6. ナレッジサイトの充実(学校事務にかかわる研究・研修・実践情報の共有を進め、情報や知識交流を促進し、学校づくりに役立つ知識創造機能を高める)

※新たな学校事務の課題に対応していくため、研究会組織のあり方を見直しながら、学校事務の高度化を進めていく方策を検討する

(3) 実行策の具体的な取り組み

ア 学校事務の組織化(共同実施)の推進

[1] 学校事務の現状、問題点、組織化の背景

これからの学校づくりには、自主性・自律性のある学校経営と、それを適切に推進するための校内組織体制が不可欠です。この中で、学校事務の使命を果たしていくためには、組織・情報・財務・カリキュラム・地域連携の5つの基幹的マネジメントを軸にして、校内では質の高い安定的した学校事務を提供し、児童生徒や保護者、地域に対しては、より満足度の高い教育行政サービスを提供していかなければなりません。また、世代交代が進んでいく中で、高キャリア層が培ってきた経験を、少経験者に伝承していくという課題も待ったなしの状況です。そこで、ほとんどの学校に学校事務職員が1名=単数配置という現状について分析を行い、使命達成に向けての課題を整理します。

☆ 学校間に学校事務レベルの格差、属人的な職務内容
  • 学校規模、学校事務職員の経験等により、学校事務や業務の質・量の格差がある
☆ 非効率的な事務形態
  • 扱う仕事が広く浅くなってしまい、目の前の事務処理をこなすのに終始している。一方で、各校に同じような事務や業務が重複して存在している。
☆ 現場での職能形成が不十分
  • 単数配置のため、OJTが困難。ジョブローテーションが機能しにくく、職能形成の過程が効果的でない。また、高キャリア層の経験を少経験者に効果的に伝えにくい。
☆ 職位に対する職責や権限が曖昧
  • 単数配置のため職位に応じた職務に当たることが、現実としては困難な状況。
☆ 学校事務のシステム化への対応が不十分なため、教職員への過度な事務負担
  • 学校の事務すべてを一人の学校事務職員では処理しきれないため、教員も校務分掌として分担せざるを得ないのが現状。教員の児童生徒の指導や教材研究の時間を圧迫し、教職員の多忙化に拍車をかけている。

こうした現状を踏まえ、根本的なレベルからの課題解決に向けて、学校事務基盤を強化し、組織運営体制の整備を進めていく必要があります。さらには地域と学校をつなぐ中心的役割を担うことの手立てとして「学校事務の組織化」を積極的に推進して、各学校や地域の教育力の向上をはかっていくことが重要です。

[2] 学校事務の組織化(共同実施)

学校事務の組織化を、スマイルプランでは下記のとおり定義しました。

☆ 地域の学校事務職員を主体とする「共同実施組織」が中心となって、教育委員会、学校、地域の連携をもとに、その地域の学校事務や業務、教育行政サービスの提供を進め、それぞれの学校の経営機能を高めていくこと
[3] 学校事務の組織化の効果と考え方

地域の学校事務職員が共同で複数校の事務、業務を効果的、効率的に進める「共同実施組織」体制を確立することにより、

  • 組織的な事務処理体制により、学校間による学校事務や業務の質・量の格差を改善するとともに、適正で円滑な執行が可能となる。
  • 学校事務職員個人の経験や能力に左右されない、質の高い安定した学校事務機能を提供できる。
  • 少経験者や代替者等が、組織によるきめ細かいサポートを受けることができる。
  • 複数校の学校事務職員等、少経験者の研修担当者の負担が軽減される。
  • 病気等、代替のない緊急時等に、組織的に対応ができる。
  • OJT、ジョブローテーションによって、すべての学校で学校事務職員が行財政面から、質の高い安定した学校経営を支えることができる。
  • 効率化で生み出した余力で、支障のない範囲で現在、教員が担当している事務を学校事務職員に移行できる。とりわけ、教頭や主任級教員の事務負担軽減をはかることができると考えられる。そして、教員、学校事務職員ともに、本来の職務に専念し、専門性を発揮する校内体制を確立することができる。
  • 個人的な能力や得意とする専門性をいかし、組織として有効に人材活用することができる。個人の力を組織全体で活用することができる。
  • 組織の長=事務長が中心となって、「共同実施組織」の「組織力」を引き出すことで、個々の学校や地域全体の教育の充実、向上につなげることができる。
  • 市町村や地域の教育や行政課題の解決に向けて、市町村教育委員会、各学校、地域の間を効果的に連携し、それぞれの思いをつなげることができる。

これからの学校づくりが、小中連携や学校間連携を始め、地域全体のかかわりから進められていくことを考えると、地域全体での教育行政サービスを高度化していくことが求められています。そのためにも、これからの教育は、学校と、地域、行政、関係団体等とが、相互に、より密接に連携して推進していくことが重要になってきます。そうなれば、その間を連絡、整理、調整する仕事が不可欠となります。この仕事を、共同実施組織が中心となって担い、各学校、地域、行政等の間をつないでいく役割を果たしていきます。つまり、学校事務の組織化とは、学校、地域、行政との連携の効果を上げるための前提であり、質の高い安定した教育行政サービスを継続的に提供する手立てであると考えます。

また、学校事務の組織化の展開については、地域全体の教育効果が高まるように、学校現場の負担を軽減し、教員の子どもに向き合う時間を確保していく視点と学校事務の高度化の視点を併せ持って考えていく必要があります。具体的な組織化の規模は、地域の実情に応じて、市町村全体の学校事務改善の観点から教育委員会との連携を軸に、同一市町村内の1から2中学校区単位で実施するのが効果的です。

[4] 学校事務の組織化の推進に向けて

学校事務の新たな役割を担っていくためには、市町村教育委員会との連携を進め、中学校区単位での学校事務における学校間連携を進めるなど、学校事務の組織化が不可欠になります。

組織化は、「地域の教育や行政課題解決をはかるため、複数の学校事務職員が連携・協働して地域の学校づくりに参画し、学校の総合力の向上に向けて、学校事務機能強化を目指した取り組み」です。学校事務の組織化を推進することにより、OJT機能を強化し、一人配置に伴う属人性の弊害から脱却し、どこの学校でも安定した事務機能を、より高いレベルで提供することが可能になります。

組織化を進めていく際には、事務長の役割や責任と権限の明確化を始め、兼務発令、職位に応じた役割分担、それをもとにした学校事務の各種規定化を考えていく必要があります。併せて、事務指導主事の教育委員会等への配置など、これからの学校事務の重要性を鑑み、学校事務職員の指導・育成体制を学校事務の実施主体である市町村単位でそれぞれ整備していく必要があります。

そのためにも、共同実施加配研究等を活用し、その地域の実情に応じて、新たな学校事務への転換を進めていく中で、学校事務の組織化を進めていくことが重要です。また、加配がない市町村においても、学校事務職員会が担っている役割を職務として位置づけるなど、地域全体で学校事務を担っていくため、学校事務における学校間連携を、順次進めていく必要があります。

イ学校事務職員の人材育成

[1] 学校事務職員の能力開発

学校事務職員は行政職員であり、教員のような資格職ではありません。しかし、法令や財務、情報、さらには地域との渉外、教育委員会との調整といった幅広い分野の職務に携わりながら、少しでも深い専門的な知識を備えていくことが求められます。学校が自主的に意思決定できる内容が広がれば広がるほど、地域全体の教育力向上に向けて、いろいろな領域において専門的な知識を備えた上で、政策的な視点を持ち、課題解決のための提案ができる能力が必要となります。

また、学校に勤務する唯一の行政職員として基幹的なマネジメントを担っていくためには、学校の目標と自分の職務を結びつけて目標を設定していく能力、情報の収集と分析力、成果や課題を見極め課題解決のための提案を企画する能力、専門的知識と数字を読む能力に裏打ちされた説得力のある説明能力、企画を実現していくための提言能力やコミュニケーション能力、リーダーシップの発揮と人的ネットワークづくりといった様々な組織マネジメントにかかわる力量を高めていく必要があります。また、住民との協働による学校づくりに向けて、企画調整力、ファシリテーション力、情報収集・情報編集力、行政機関とのコーディネーション力など、学校内外の関係者・協力者と連携した学校づくりを実践していくために必要とされる力量の向上に向けた研修を充実させていく必要があります。さらには、県の「あいち人材育成ビジョン」で求められている「行政を担うプロ」の能力として、これからの学校事務を担う「スペシャリスト」の能力に加えて、学校組織目標達成に向けての「マネージャー」としての学校組織マネジメント能力の向上をはかる手立てについても構築していく必要があります。

これらの学校事務に求められる新しい資質・能力の開発を進めていくためには、権限や責任が、市町村に、そして学校に与えられていく時代においては、研修の中心も市町村や学校現場に移行する必要があります。

そこで、市町村教育委員会には地域に応じた学校づくりを支える事務は、市町村の事務であり、市町村の将来を担う人づくりにつながる行政事務として積極的に学校事務職員の能力をいかしていくとの考えに立ち、学校事務職員の人材育成に努力する必要があると考えます。市町村による学校事務職員を対象とした制度研修の拡大は、今後是非とも望まれるべきものと考えます。

そして、勤務する学校現場では、学校事務の重要性を十分に認識して、学校事務職員の能力開発や意欲の向上、研修の効果などを見極め、学校経営の中でさらに重要な役割を与えていくなどして、学校事務職員の育成をはかることが望まれます。

さらには、県の人材育成ビジョンをもとにまとめられた「職級別の行動モデル例」を参考(※巻末参考資料)に、職名に応じた役割と能力を明確化し、それぞれの職名に応じた研修の内容を充実していくとともに、OJT機能を強化していくために、組織全体で学校事務職員の人材育成を確立していく必要があります。

また、経験の豊かな学校事務職員による指導・育成・相談といった体制の整備も必要になってくると思われます。

[2] 人材育成の方向性(自主研修体系9次案の構築に向けて)

目指す学校事務職員像をそれぞれが具現化をしていくためには、これからの学校事務を担うための能力開発を体系的・継続的・組織的に進めていくことが重要になります。スマイルプラン推進のため、自主研修体系9次案の構築に向けて、研修内容の充実に取り組んでいきます。また、「市町村立学校事務職員研修企画委員会報告書」であげられたように、県教育委員会、市町村教育委員会、小中学校事務職員研究会が連携・協力して研修体系を確立する必要があります。併せて、研究会内部においても、県事研・支部・市町村単位での研修が効率的・効果的に行えるよう、自己研鑽の取り組み支援とともに、相互補完的な研修を進めていく必要があります。


4 今後の課題

学校事務を取り巻く課題として、少経験者や再任用者の増加等、学校事務職員の経験年齢構成が大きく変化していく中で、スムーズな世代交代を進め、どこの学校でも質の高い安定した学校事務を提供していくための体制づくりが急がれています。また、教育行政改革が抜本的に進んでいく中で、これからの学校づくりを担う新たな学校事務への展開も大きな課題になります。事務長を始め高キャリア層が次々と退職していく前に、豊富な経験や知恵をどのように少経験者に伝え、新たな学校づくりにどういかしていくのかが、喫緊の課題になっています。ここでスマイルプランを推進していくために、当面する研究会の課題について整理します。

(1) 世代交代への対応

世代交代への対応は、単なる知識の伝承という問題だけではなく、これからの学校づくりに向けて、経営参画や学校運営のノウハウをどう伝え、どういかしていくかという視点が重要になります。そのため、世代交代への対応は、学校事務の課題解決を進めていく中で、市町村全体で総合的に考えていく必要があります。

(2) 意識改革と情報発信

目指す学校事務職員像を担うためには、まずは学校事務職員の意識改革を進めていくことが必要です。そして、その行動を通して、学校事務の重要性を内外に示していくことが重要になります。そのためには、今一度学校事務の原点に戻り、「なぜ、学校事務職員は学校にいるのか」、「職位に応じた役割を果たしているのか」を絶えず問いかけながら、「子どもたちや地域の人々の笑顔のために何ができるのか」を考え、できるところから行動に移していくことが重要になります。その実践を組織的に積み重ねていくことにより、学校事務職員の重要性と存在意義が教育関係者や地域の人々に伝わっていくことと思います。

(3) 関係機関・団体、他職との連携・協働

これからの学校づくりを実現していくために、関係する人々がそれぞれの専門性を発揮し、連携・協働していく必要があります。学校に勤務する行政職員として、連携・協働をもとにした学校事務を展開していくためには、次のことが重要になります。

  1. 市町村教育委員会との連携・協働(学校事務改善委員会の設置等)
  2. 県教育委員会、校長会、教頭会等との連携・協働(共同研究・研修等)
  3. PTA、地域、教育関係者・識者との連携・協働(共同研究・研修等)
  4. 行政との連携・協働(県大会等各種大会、行事等の共同開催等)
  5. 情報発信と交流(学校事務の研究・研修・実践情報の発信と交流)

(4) それぞれの実施主体の取り組み課題

スマイルプランの実現に向けては、会員・市町村・支部・県事研全体で取り組むことが重要です。まとめとして、当面取り組む必要のある課題を整理します。

《会員》

☆ 目指す学校事務職員像を担えるように、それぞれの学校や地域での学校づくりの場で、できるところから具体的な実践を積み重ね、その成果を積極的に地域や社会に発信していくことが重要になります。また、そのノウハウを周りの学校事務職員や他地域にも広げていく必要があります。

《市町村》

☆ 分権化(地域主権化)の動きを見据え、目指す学校事務職員像を担えるように、個々の学校での実践を支援できるように、それぞれの市町村でできるところから、できる範囲で具体的な行動計画を考えていく必要があります。

学校事務の課題を解決していくため、市町村教育委員会や校長会等の関係機関と連携した「学校事務改善委員会」を設置するなどして、それぞれの市町村の学校の総合力向上に向けて、学校事務の改善を進めていく必要があります。同時に、学校事務の役割分担や処理方法について見直しを進めるとともに、「学校事務の組織化」など、これからの学校事務のあり方について協議する機会をつくることも重要になります。

《支部》

☆ 市町村で対応できない課題や支部全体の課題解決に向けて、情報の共有化を始め、それぞれの支部でできるところから市町村支援に向けて取り組んでいく必要があります。

《県事研》

☆ 県事研でできることとして、県全体の課題解決に向けて、「ビジョンの構築」、「方向性・モデルプランの提示」、「統一的なサポート」、「支部・市町村の支援策の検討及び支援」、「情報の共有・分析・発信」と限られてきています。その中でも、世代交代への対応と新たな学校事務の展開が急務になっています。そのため、「市町村立学校事務職員研修企画委員会報告書」の成果と課題を踏まえ、県教育委員会、校長会、市町村教育委員会などの関係機関とともに、これからの学校事務への対応とそれを担う事務職員の育成に向けてともに考えていく場(研修企画委員会等)を設定する必要があります。県全体の課題解決に向けた働きかけが、スマイルプラン実現の成否に大きな鍵となると考えます。


5 後期スマイルプラン展開に向けて

スマイルプラン実現に向けての源泉力は、会員個々の学校や地域での具体的な実践です。また、スマイルプランで掲げた「子どもたちや地域の人々の笑顔あふれる学校づくり」を進めていくためには、保護者・地域の人々をはじめ教育や行政に関わる人々との新たな連携・協働関係づくりを進めていくことで,会員個々の具体的な実践を地域全体の組織で支援することができます。

一方で、これからの学校づくりに向けては、安定し、質の高い学校事務の提供が求められています。これらの課題を解決していくために,事務長を始めとする職位に応じた役割分担をもとにした、地域全体で3tor 機能を発揮していく仕組みづくりと具体的な実践が急務であると考えます。

併せて、市町村の時代に向け、県事研でできることは限られてきています。そのためにも、県事研でしかできないことを明確に示し、支部・市町村及び共同実施組織での役割分担を基にした新たな組織体制づくりを進めていく必要があります。

スマイルプランの後期展開に向けては、上記の観点を踏まえて、[1]事務基盤の強化、[2]人材育成、[3]経営参画(新たな学校事務の展開)の3つのポイントを中心に相互にステップアップを図りながら取り組んでいきます。

地域とともにある学校づくりに向けて、全ては子どもたちの笑顔のために、学校事務の立場から会員個々の学校や地域での具体的な実践が急がれています。そしてそれを支援できるよう、県・支部・市区町村が一体となって相互補完しながら取り組んでいくことが、今求められています。


資料編1 行程表


資料編2 用語の説明

グランドデザイン
壮大な図案・設計・着想。長期にわたって遂行される大規模な計画(大辞泉)。学校事務のグランドデザインは、新しい時代の中・長期的な学校事務の全体構想を描くものであり、義務教育における学校事務・事務職員の将来構想、長期的な全体計画である。(全事研)
「3tor (スリーター)」
県事研が提唱するこれからの学校事務に必要な機能の中から、特に重要となる次の3つの役割、校内での行財政管理を担う「アドミニストレーター」(行財政管理者)、行政と学校の思いをつなぐ「コーディネーター」(調整者)、地域の人々とともに学校づくりを促進する「ファシリテーター」(協働促進者)を総称したもの。
新たな公(新しい公共空間)
行政が住民やNPO、民間企業など地域の多様な主体と協働して自治体を運営していく公共空間。
補完性の原理
個人が自らできることは個人が行い、個人では不可能なことを家族や地域社会といった小さな単位が、さらに、市町村、県、国といった大きな単位が順に補完していくという考え方。
学校組織マネジメント
学校内外の能力や資源を開発・活用し、学校にかかわる人たちのニーズと適応させながら、学校の教育目標を達成していく活動(過程)
OJT(On-the-job training)
職場での具体的な業務を通じて、仕事に必要な知識・技術・技能・態度などを研修することによって、全体的な業務処理能力や力量を育成する活動。
ジョブローテーション
メンバーの将来を見通した育成計画を立案し、それに基づいて必要な時期に必要な職務を計画的に体験させる人事管理上のしくみをさす。仕事の中身を変えるというより、職群の異なったところへのローテーション、同種の職群の中で異なった職務へのローテーション、あるいは同じ職群でも場所的に異なったところへのローテーションのことをいう。(産業能率大学人材開発に関する用語集)
学校事務の統括
個々の学校事務の業務を学校経営目標達成に向けて、有機的に機能するように全体としてひとつにとりまとめて管理していくこと。
学校事務の見える化
学校事務についての情報を教職員、保護者、地域など学校にかかわる人々の中で共有することにより、学校事務の課題解決や改善に役立て、地域に開かれた学校づくりを実現すること。
カリキュラム(教育課程)、カリキュラム編成会議
学校教育目標を達成するために行う教育活動計画全般のこと。教育課程とも言う。また、教育課程を創り出していく会議をカリキュラム編成会議という。
アドミニストレーション
マネジメントの行う指揮命令に合わせて、各部門の現場活動を効率的に行うための諸活動を指し、確立した組織機構の中で機能別に現場の業務を管理すること。学校内での行財政面での管理者(アドミニストレーター)
ファシリテーション
メンバーに主体的な参加意識を醸成し、チームを目的に向かわせるため効果的なスキルであり、会議等を効果的に進めていくこと。学校における住民参加の協働促進者(ファシリテーター)
コーディネーション
組織がその目標を達成するため、行動の統一をはかること、分散された管理機能を調和・整備すること。学校における行政等との調整者(コーディネーター)
研修企画委員会(市町村立学校事務職員研修企画委員会報告書)
「長期的な視野に立つ計画的な事務職員の育成をはかるため、望まれる事務職員としての基幹的な役割、役割を果たすために必要とされる能力・資質、さらにその開発方法について協議」し、平成5年に「市町村立学校事務職員研修企画委員会報告書」を作成。委員は、「県教育委員会管理部総務課長、尾張教育事務所管理課長、県総合教育センター総務部長、愛知県都市教育長協議会長を務める市教育委員会の人事担当部課長、愛知県町村教育長協議会長を務める町村教育委員会の人事担当部課長、愛知県小中学校長会の推薦する者、愛知県公立小中学校事務職員研究会の推薦する者」。
兼務発令
複数の組織で職務を兼務したり、業務を分担して行う場合に必要な発令行為。
学校事務改善委員会
学校事務の改善に向けて、関係する機関や団体と協議をする機関(場面)。事務処理の改善だけでなく、学校全体の事務のあり方を考え、その推進体制づくりを構築していく中で、地域の教育力、学校力の向上に向けての協議場面としての位置づけをはかり、地域の学校事務全体の改善に向けて取り組む地区が増えてきている。

☆ 参考文献


資料編3 平成24年度学校事務情報交換会プレゼン資料


資料編4 「学校事務の将来を描く」


資料編5 自主研修体系8次案(学校事務職員の職務行動例より)